不妊鍼灸
不妊症の定義・原因
日本産科婦人科学会編集の産科婦人科用語集によると不妊症とは
「生殖年令の男女が妊娠を希望し、ある期間避妊事すること無く性交渉をおこなっているのにもかかわらず、妊娠の成立を見ない場合を不妊といい、妊娠を希望し医学的治療を必要とする場合」と定義されています。
原因は様々であり、女性側に関しては卵管因子、卵巣因子、子宮因子、免疫因子あるいは原因不明。男性側に関しては造精障害、射精障害、副性器障害、精路通過障害などが挙げられます。
どのような人が妊活で鍼灸に?
不妊治療で専門の病院で治療を受けているが中々できない
卵の質(グレード)が良くない
卵は取れるが胚盤胞まで育たない
着床しない
二人目以降を希望しているがなかなかできない
血液検査で性ホルモン値に異常がある
子宮内膜が厚くならない
高齢で妊活を始めた
AMHが低い
上記の様に妊活において難渋している方が多いですが自然妊娠、人工授精、体外受精のいずれの段階であっても鍼灸は有効です。
骨盤腔内の血流量増加による卵質の向上
自律神経の安定
ホルモンの正常分泌
疲労、ストレスの解消
着床率の向上
鍼灸で出来ること!
卵質の向上
当院の不妊鍼灸は卵質の向上に重きを置いています。
自然妊娠、人工授精、体外受精、どの段階であっても妊娠を望む方にとって卵子の質は最も重要な要素の一つです。
卵子は胎児のころからつくられ、その数は最大で約800万個と言われます。生まれる時点ですでに減り始め200万個程に、生理が始まる頃には20~30万個程に減ります。卵子は減り続ける一方で新しくつくられる事はありません。
加えて、これは大変シビアな事実なのですが、卵子は加齢と共に老化します。老化した結果、卵質は低下し、染色体異常が増えてしまうのです。
そのため如何にして卵子の質の向上を図るかが妊活では重要になります。
古来より鍼灸治療は婦人科の病気や、安産、妊娠に効果的と言われてきました。昨今は研究が進み、多くのデータで鍼灸治療の介入による妊娠率の向上が確認できるようになりました。
特に卵質の向上に関しては、特定のツボを刺激することによって卵巣や子宮の局所血流が向上することが判明しており、たくさんの血液が卵巣に送り込まれる事によって、受精後の長旅(受精→分割→着床)に耐えられる栄養豊富で質の高い卵子の育成が可能となります。
そんな不妊鍼灸はエビデンス(科学的根拠)を基に治療を組み立てています。
また、当院では鍼灸治療とスーパーライザーを用いた低出力レーザー療法(LLLT)の併用を行っています。スーパーライザーによる近赤外線照射は自律神経の安定、ホルモン分泌、免疫といった妊娠に必要な様々な要素にアプローチできると同時に、通常の温熱治療器では届かない様な皮下7~8センチにある卵巣の血流改善が可能です。
着床の補助・流産予防
鍼灸は着床障害の緩和や初期流産の予防が可能です。
「子宮内膜が厚くならない」
「受精卵のグレードが良いのに着床しにくい」
「妊娠がなかなか維持できない」
といった方は鍼灸による子宮へのアプローチが効果的かもしれません。
特定の鍼灸治療は、卵巣のみならず子宮の局所血流も改善することが確認されています。
子宮の血流を改善することで、子宮内膜を厚くすることが可能であり、豊富な血流は内膜の機能を正常化させ接着因子の分泌を促します。
また妊娠初期において、胎盤ができる7週目までは卵巣にとどまる黄体が分泌するホルモンが妊娠の維持に重要であることから、卵巣の血流を上げることによって黄体の機能を活性化させ妊娠維持を補助します。
その他、鍼灸は血流改善のみならず免疫機能にも作用します。
着床しない、妊娠の維持ができない方の中には免疫機能の乱れが起きている可能性があります。本来、妊娠時には受精卵を受け入れる「免疫寛容」が働きます。しかし、何等かの原因で免疫機能が乱れると、受精卵を排除してしまい妊娠の成立・維持が困難となります。
鍼灸では自律神経の調整により免疫機能を正常化させ、妊娠の成立と維持を目指します。
不妊鍼灸とスーパーライザー
当院では、近赤外線光線治療器スーパーライザーを導入しています。
スーパーライザーは、整形疾患における痛みの緩和を筆頭に耳鼻科、皮膚科、自律神経疾患など多様な症状に対応できる治療器具です。そんなスーパーライザーですが、近年では特に生殖医療分野において、その高い効果が注目を集めており、妊娠率の向上を目的に多くの不妊治療専門の病院でも使われている機械でございます。
当院では3つの目的で使用します。
①自律神経の調節
②卵巣および子宮の局所血流の改善
③免疫機能の正常化による着床補助と妊娠維持
です。
①自律神経の調整
“のど”には、星状神経節という交感神経の塊があります。スーパーライザーによる星状神経節近傍への光線照射は交感神経に適度な抑制をかけ自律神経の調整を行ってくれます。その健康効果は多岐にわたり、血流の改善、疲労回復、リラックス、抑うつ改善と様々です。加えて、脳血流の改善や視床下部の機能改善なども可能であることから妊娠に必要なホルモン分泌の正常化も期待できます。
②卵巣および子宮の局所血流の改善
卵巣動脈や子宮動脈を狙ってスーパーライザーを照射すると、その部位の血流量を増やすことが可能です。生体深達度の深いスーパーライザーの光は、身体の奥にある卵巣動脈や子宮動脈に確実にアプローチすることができるのです。
血流量が増えることで質の良い卵子が育ち、子宮内膜が厚くなります。
③免疫機能の正常化による着床補助と妊娠維持
妊娠時には本来、母体が受精卵を受け入れる「免疫寛容」が働きます。しかし何等かの原因で正常に作動しない場合、母体が受精卵を異物として排除してしまいます。スーパーライザーで星状神経節近傍照射等を行うことで自律神経を安定させ、免疫機能を正常化し、妊娠の成立と維持を目指します。
スーパーライザーは高い治療効果を持ちながら低刺激で身体への負担がほとんどありません。その為、鍼灸との相性が大変良い治療器です。鍼灸とスーパーライザーを併用することによって相乗効果を狙います。
スーパーライザーとミトコンドリア
ミトコンドリアとは細胞内にある発電所の様な機関です。昨今では妊活との深い関りが注目されています。
ミトコンドリアに異常が出ると、エネルギー不足により細胞内で行われる様々な働きに支障が出ます。加えて、細胞に有害な活性酸素を生み出してしまいます。ミトコンドリアのDNAは活性酸素などのストレスに大変弱いため、活性酸素が過剰になるとミトコンドリアの働きによってつくられるエネルギーやタンパク質の合成に支障が生まれ、悪循環に陥ってしまいます。
加齢卵子は、細胞内のミトコンドリア異常が多いとされ、それゆえにエネルギーも不足しがちであり、実際に妊娠率は低下傾向です。また異常ミトコンドリアが多いということは、染色体異常も多い可能性もあり、不妊治療において大きな障壁となります。
スーパーライザーの光は、このミトコンドリアを活性化してくれる低反応性レーザーであり、ミトコンドリアが活性することによって細胞内のエネルギー不足の解消、即ち質の良い卵子の育成が期待できます。
男性不妊
WHOの調査によると不妊症の原因が男性のみにある場合は約24%。男女共にある場合は24%。すなわち、約50%の割合で男性にも原因があるという事が判明しています。
そんな中、昨今では男性不妊や造精機能障害に対する鍼灸治療の有効性が研究により確認されつつあります。
特に精液所見の改善は妊娠率向上のために重要な要素です。
いままで精液所見による問題で体外受精のみしか治療ができなかった場合、所見の改善により自然妊娠の可能性が生まれ、ステップダウンできるかもしれません。
ステップダウンは、不妊治療における女性の負担を大いに減らしてくれます。
男性不妊の中でも
乏精子症(精子の数が少ない状態)
精子無力症(精子の動きが悪い状態)
は鍼灸の適応であり、精巣の血流改善や前立腺機能の向上により精液所見の改善を目指します。
その他、勃起障害(ED)や射精障害も鍼灸の適応となります。
逆子鍼灸と陣痛促進
胎児が逆子で自然分娩が不可能な場合は、帝王切開を行いますが、鍼灸を用いた逆子治療で改善されることがあります。
逆子には特にお灸が良いとされ、作用機序に関しては不明な部分が多いのですが昭和期に医師によってその効果を示した論文が発表されたことで注目を集め現代では「逆子にはお灸」と広く周知される様になりました。
逆子治療は28週以降から始めるのが良いとされ28~31週以内でしたら高確率で改善します。しかし32~35週以降になると徐々に改善率は低下し、赤ちゃんが大きくなるにつれ回転は難しくなります。逆子の改善を希望される方は早めのご来院をおすすめします。
予定日を過ぎても陣痛が始まらない方、特に自然分娩を希望しているのに帝王切開になりそうな方などには、鍼灸による陣痛促進施術がございます。身体をリラックスさせた上で、伝統的な婦人科のツボを用いると、不思議と胎動が始まり出産に至ることがあります。現在のところ効果に対する医学的なエビデンスはありませんが、古くから経験的に行われてきました。お悩みの方は是非一度ご相談下さい。
一般鍼灸
大人向けの鍼灸治療も受け付けております。
整形疾患(肩こり、腰痛、五十肩、ひざ痛など)
自律神経疾患
耳鼻科疾患(めまい、耳鳴り、突発性難聴、メニエール病)
円形脱毛症
皮膚疾患(アトピー性皮膚炎など)
その他お悩みの症状がございましたらお気軽にご相談ください。